演題 4次元の原子軌道に関する研究
発表者
(所属)
 ○木戸冬子(埼玉大工),杉山孝雄(埼玉大工),細矢治夫(お茶大理)
連絡先 連絡先 〒338-8570 浦和市下大久保255 埼玉大学 工学部 応用化学科
TEL:048-858-3511/3516
FAX:048-858-3511/3516
E-mail:tokita@apc.saitama-u.ac.jp
キーワード 水素原子, 原子軌道, 4次元原子軌道, 等値曲面表示法, 角依存性
開発意図
適用分野
期待効果
特徴など
4次元の原子軌道を角部分で表示するため基礎研究として,水素原子の等値曲面の通常の3次元の描画法をどのようにして角部分のみの表示に応用するかを研究した
環境 適応機種名 シリコングラフィックス社 ONYX Reality Engine2   
OS 名 IRIX Ver. 5.3   
ソース言語 AVSネットワーク言語.   
周辺機器   
流通形態
右のいずれ
かに○をつけ
てください)
  • 化学ソフトウェア学会の
    無償利用ソフトとする
  • 独自に配布する
  • ソフトハウス,出版社等から市販
  • ソフトの頒布は行わない
  • その他
  • ○未定
具体的方法

1. 目的

 われわれはこれまで,通常の3次元の可視化方法を様々の角度から研究してきた1), 2). 著者の一人細矢は,最近,4次元の原子軌道の数式を報告した3 〜 5). そこで,3次元の可視化技術が4次元の数式の描画にどのように応用できるかを調べるため,基礎的な研究を行った.

2. 方法および結果

2.1 水素原子の通常の3次元の原子軌道の角部分は,一般に式 (1) で表される.原子軌道の角部分表示とは,θ, φを全空間にわたって変化させた時の式 (1) のYの値を,図1 のOPの長さとしてPlot したものである.
 Y =Θ(θ)・Φ(φ) (1)

図1 点Pの直交座標 (x, y ,z) と極座標 (r,θ,φ)の関係

2.2 細矢は、p次元の原子軌道の数式を、上記の角部分の式 (1) とn-1 の積の形で報告している。ただし、は主量子数である。たとえば、3d(3z2-r2)軌道の場合、その数式は、Nを定数として、単に、式 (2) で簡潔に表示できる。
 N(3z2-r2) (2)
2.3 われわれは、式 (2) を角部分として図示するにあたり、式 (3) の等値曲面を求める手続きで、上記 2.1 項と同じことが実現できる事を見い出した。
 (3z2-r2)/r3(3)
この手続きによれば、動径部分を含む式 (4) を可視化(図2)する場合と同じ方法で、角部分の作図が実現できる(図3)。
 Nexp(<-r/3)(3z2-r2) (4)
現在、同じ方法を4次元の原子軌道の描画に適用する事を検討中である。
図2 3d(3z2-r2) 軌道の等値曲面表示 
図3  N(3z2-r2)の角表示

3. 参考文献および注

(1) 時田澄男,渡部智博,木戸冬子,前川仁,下沢隆,「水素原子の原子軌道の可視化」, J. Chem. Software, 3, 37-48 (1996).
(2) 時田澄男,木戸冬子,「水素原子のオービタルの電子辞書化に関する研究」,CACS FORUM, 16, 1-10 (1996).
(3) H. Hosoya, J. Mol. Struct., 352/353, 561-565 (1995).
(4) H. Hosoya, Int. J. Quantum Chem., 64, 418-421 (1996).
(5) H. Hosoya, J. Phys. Chem. A, 101, 35-41 (1997).
(6) S. Brand, H. D. Dahmen 著, 平田邦男訳, 「コンピュータによる図説量子力学」共立出版, (1989), p.119.