演 題 | 3次元医薬品構造データベースの構築(その2) | |
発表者 (所属) |
○山本陽一、土橋 朗 (東京薬科大学薬学部) | |
連絡先 |
〒192-0392 東京都八王子市堀之内1432-1 東京薬科大学薬学部 TEL: 0426-76-3082, FAX: 0426-70-7067, E-mail: dobashi@ps.toyaku.ac.jp | |
キーワード | 分子モデリング、分子力学、分子動力学、医薬品構造、データベース | |
開発意図 適用分野 期待効果 特徴など |
日本医薬品集(1997年10月版)に収載された医薬品の3次元構造データベースを作成する。各医薬品の最安定コンホマーと コンホマーの分布、またコンホマーの分布を用いて分子の運動性をアニメーションとしてWWWホームページに掲載する。 | |
環 境 | 適応機種名 | 下記のOSをサポートする機種 |
O S 名 | MDL Chemscape ChimeをプラグインとするNetscape Navigator 3.0以上が機能するMacOS, Windows95あるいはNT、およびSGI IRIX 5.Xや6.X | |
ソース言語 | HTML | |
周辺機器 | なし | |
流通形態 (右のいずれ かに○をつけ てください) |
・化学ソフトウェア学会の無償利用ソフトとする ・独自に配布する ・ソフトハウス,出版社等から市販 ・ソフトの頒布は行わない ○その他 ・未定 |
インターネットを経由して全ての医薬品の座標情報はPDBとMDLmolファイル、あるいはSdファイルとして入手できる。 |
1 はじめに
日本医薬品集(1997年10月版)に収載された医薬品としての有機化合物の3次元構造をデータベース化することを目的として、現在までに約1200種の医薬品の最適化構造とコンホマー分布を分子力学および分子動力学計算によって求め、WWWホームページ (http://www.ps.toyaku.ac.jp/~dobashi/)に公開した。
各医薬品のコンホマー分布は個々の構造ファイル(PDBあるいはMDLmolファイル)をマルチ構造ファイル(Sdファイル)としてまとめ、最適化構造と共に掲載した。医薬品の3次元の最適化(最安定)構造を含むコンホマー分布は、医薬品の生体内の受容体との結合と生理活性の相関をQSARなどの手法で探索するために不可欠の情報である。
我々は医薬品の構造データベースにコンホマー分布を組み入れ、またコンホマー計算の過程で得られる分子動力学計算の結果を利用してアニメーションを作成し、分子運動を視覚的に捉えられるようにした。各医薬品に対して作成されたSdファイルは市販の分子設計支援システム(例えばSYBYL(Tripos))のスプレッドシート型データベースや、MDL, ISIS/Hostなどの構造検索データベースに直接供給でき、既存医薬品に対する参照データとして利用することができる。
2 データベースの概要
医薬品構造のモデリングはMacroModel4.5 (Department of Chemistry, Columbia University) を用いて行った。各医薬品をモンテカルロシミュレーションにかけ、安定コンホマーを得た後、さらにこれを真空中300Kに加熱し、100psの間に100個のコンホマーをサンプリングする分子動力学計算を行った。全てのコンホマーを分子力学計算により構造最適化し、一組のコンホマーを得た。
ここで得られたコンホマーの座標情報(MacroModelファイル)を座標変換プログラムBABEL(Department of Chemistry, University of Arizona)によりMDLmolファイルに変換し、これらをさらにSdファイルにまとめた(最適化構造は従来、PDBファイルとして掲載してきたが、順次MDLmolファイルに置き換えている)。
WWWホームページには医薬品の一般名による階層型のデータベースとして最安定コンホマーのPDBあるいはMDLmolファイルと、コンホマー分布を示すSdファイルを同一ページ内に掲載した。座標ファイルはMDLのプラグインChemscape Chimeによって描画される。また、特定の医薬品をその名称から検索するため、部分的に曖昧検索を許すCGIをサーバに組み入れた。医薬品の掲載画面の一例を左図に示す。
また、全ての医薬品の構造最適化の過程で行った分子動力学計算を視覚的に表示するため、動力学計算の過程でサンプリングした複数のコンホマーの座標情報をBABELによりxyzファイル形式に変換し、Chemscape Chimeにより連続表示し、アニメーションとした。なお、今後、新規に日本医薬品集に収載される医薬品を効率よく本データベースに取り込むため、MacroModelによるモデリングの後、各種の構造ファイルを変換、編集する作業や、HTMLファイルの作成作業などを全てUNIX上のシェルスクリプトとして統合することを試みている。